糖尿病のため、外科処置を避けたい症例
リーゲル・テレスコープ・デンチャー症例2
60代後半の女性。入れ歯で物が噛めないとの事で来院されました。
術前写真
術前写真です。下の入れ歯ははずしております。
上あごの前歯の方は写真ではわかりませんが、歯茎の土手が全く無く、
かろうじて残っている歯茎の土手はふにゃふにゃの柔らかい肉です。
非常に難しい総入れ歯の症例と思われます。(一般的には入れ歯は上より下のほうが難しい。)
インプラントを2本ほど埋入して、それを支えに入れ歯を安定する方法を考えました。
しかし、大きな問題がありました。糖尿病だったのです。
糖尿病でも管理されていれば問題ないのですが、
投薬を受けていてもHbA1cという糖尿病の重さをはかる値がどうしても下がりませんでした。
糖尿病が重篤だと、傷の治りが悪く化膿しやすい為、インプラントが失敗する可能性が高まります。
仮に成功しても、将来化膿するリスクが非常に高いです。
そのため、大きな外科処置を可能な限り避け、義歯にて対応することとしました。
義歯製作
製作途中の写真です。
咬合器という機器を用いて作成しました。
咬合器は頭蓋骨の中における歯の位置をおおよそではありますが再現できる機器です。
この機器にて、理想的な位置に歯を作っていくと、入れ歯にかかる力を入れ歯がはずれない方向に調整しやすくなります。
上は総義歯(総入れ歯)、下はリーゲルテレスコープデンチャーとなりました。
義歯完成
完成した所です。
口の中で全く動くことなく食事をすることができます。
内側のレバーをはずすと、義歯をはずすことができます。
「食事に不自由はありません。たくあんも食べることができます。」とおっしゃってて頂けました。
義歯を作る前から、下の入れ歯は動かないようにすることはできると思っていました。
問題は上の入れ歯でした。食事は不自由ないとのことでしたが、しゃべる時にたまに落ちることがあるとのことでした。
普通、上顎の義歯を落ちないようにするのは下の入れ歯を作るより簡単なのですが、この場合は本当に顎の土手が無いため、これ以上は難しいことを説明し、納得していただきました。
食事に不自由が無いのが何よりでした。
リーゲルテレスコープ義歯はインプラントと比較して、
確かに出し入れの面倒くささあります。しかし、
大きな外科処置をしなくてもよい。
有病者・高齢者にもできる。
治療による体への負担が小さい。
インプラントほどではないが、動かないのでしっかり食事をすることができる。
取り外しをするので、清掃しやすい。
取り外しをするので、介護者による口腔ケアがしやすい。
といった利点もたくさんあります。
費用は
上顎:金属床総義歯:¥250,000
下顎: :¥1,420,000でした。(税別)
下顎の部分入れ歯(部分義歯:リーゲルテレスコープデンチャー)
内訳は以下の通りです。
かぶせ物の部分:¥160,000×5本=¥800,000
義歯の部分 :¥200,000×1床=¥200,000
レバーの部分 :¥ 50,000×2個=¥100,000
レバーの軸部 :¥160,000×2個=¥320,000
総額 ¥1,420,000
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。